【X】 秘密


 十三人のアルカナと二人の長の簡単な挨拶も終わり、ようやくいつもと変わらない会合スタイルとなった。
 カミエル ラグリエットは、今までとこれからの区切りをつける様に「さて…行こうか」と、誰に対して言うわけでもない言葉を口にする。
 まず探すのは、勿論の事ながら『天野 咲也』。
 会合が始まる前まで会話をしていた相手だ。
 アルカナがぞれぞれの場所に移動する前に捕まえなければ、捕まえる事も困難になってくる。
 いち早く目標人物の所へと移動した。
「よぉ。サクヤ アマノ。向かう場所は一緒だろ?一緒に向かわないかい…?」
「別に…構いませんが。狙いは、先刻の続きでしょう?」
 ラグリエットの誘いに了解をだし、肩を並べて歩き出した。
「解かっているなら、話ははやい。……で、何を知っている」
「だから、先刻も言ったじゃないですか。『その言葉、そのまま貴方に返します』と」
 天野 咲也に言われて、ラグリエットはふと考えた。
 なんで…って……。
「俺が監督責任者にあまり名乗り出ないと言うのなら、リベラル様も同じでしょう。俺以上に責任者に名乗り出ないじゃないですか。それなのに、会議の時に『氷天 剣』と名前が出た途端『あ、それ俺担当で宜しく』と言って…。俺だけじゃない、あの場所に居た者全員が思いましたよ?何があるんだって」
 天野 咲也はそう言った後に、『何を知っているんです?』と、もう一度繰り返して質問をした。
「ただ、興味があっただけだよ。ある意味特別な血筋を受け継いでいるんだからな」
「あぁ…。名前であの話しを思い出したのですか?」
「御名答。アカリも覚えているだろう?」
 天野 咲也の片腕に抱かれていたクマのぬいぐるみに対して語りかける。
「わたしもそれは思ったよ。さくやくんもあの時言っていたよね。あの子供か…ってさ」
 でも、その時点で天野 咲也は名乗り出なかった。
 という事は、それ以外の何か原因が出来たという事なのだが。
「教えてはくれないのか?」
 ラグリエットは神妙な面持ちで尋ねた。
 天野 咲也は暫くの間黙っていた。
 視線は、ようやく見えるようになった目的地――責任者として顔を見せる相手の居る場所――へ向かっている。
 ラグリエットも相手との距離を測る。
 もうそろそろこの会話を止めた方がいいポジションに辿り着いていた。
「せめて、俺が知っている事以上かどうかくらいは、教えてくれないか」
 そこまで言いたくないのなら…と、提案をする。
 これ以上は自分も引かないという意味を含めながらだ。
 しかし、その問いに天野 咲也はこう答えるだけだった。
「それも秘密です」








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