【V】 目的


 アルカナ達は萌葱とマゼンタとの簡単な特別集会を済ませ、会合の場へと赴いた。
 十三人のアルカナたちの前を萌葱とマゼンタが歩いている。
 今日は新しくこの仕事に就いた人間がいるため、会合の場へと入る時、簡単な紹介を一人ずつされる事になっている。
 これは昔から決まっている事らしいが、何度もこれを経験している人達にとっては退屈なものでしかないだろう。
 勿論、自分もその一人だ。
「紹介される側が『退屈だ』…って言うんだから、聞く側なんてもっとだよな……」
 溜息を吐きながら、【アルカナ LIBERAL】である、カミエル ラグリエットが愚痴を漏らす。
「それ…同感です」
 後ろを歩いていた人物も、溜息を吐きながら言った。
 横目で後を伺うと、そこにはアルカナの中でもよく知っている人物の気配がする。
 そこで、ふとした事を思い出し、歩調を緩めその人物の隣に移動した。
「おい、いつの間に『氷天 剣』の保護兼監督責任者になったんだ?アイツの話しがあがった時にアレの責任者は俺がすると言っていただろう?」
 声を小さくしながら問い詰める。
「前に断りを入れたじゃないですか。兼任でさせて頂きます…と……。その時了解しだでしょう?」
 困ったような表情を浮かべつつも、以前言っていた事に対する確認をとろうとした。
「その了解だって事後承諾の上に手紙で『兼任をする事にしたから』という断りだけ……。イヤ、これはもうどうでもいい事なんだ。こういう事は今回に始まった事ではないし」
「それじゃぁ、何が言いたいんですか?リベラル様」
「問題は、あまり責任者を名乗り出ない貴様が、何故アイツの時には名乗り出たんだ?しかも、話し合いの場所では何も言わなかったのに、その後突然言い出すなんて、何かアイツの事で知っている事でもあるのか?特別な何かを…」
 兼任の断りの手紙が来た時から思っていたことなのだが、なかなか面と向かって話すタイミングがなかったのだ。
 今のこのタイミングも詳しくは聞けないことは解ってはいても、それでも全く聞けないよりは少しでも…と思ってのこと。
 だから、詳しい話は後々でもよかった。
 端折ってでもいいから、どういうことを知っていての事なのかを知りさえすれば。
 なのに、返ってきた言葉は――…。
「その質問。貴方に返します。それに…ほら、リベラル様。着きましたよ?俺たちも所定の立ち位置に着かなくては」
 その言葉で自分の今置かれている立場を思い出した。
 話しをしているうちに、会合の広場の前に着いてしまっていたのだ。
 他のアルカナ達や萌葱・マゼンタは、既に所定の位置に立っている。
 結局その言葉の意味さえ理解できないまま、自分も所定の場所へと向かう。
「……なんだよ…。結局、解らなかったじゃないか」
 文句を言いつつも、この後の事を考える。
 会場全体に紹介をされた後、新しく責任者を担うものはその者達の場所へ会いに行く。
 担当される側は大抵、誰が自分の責任者となるのかを知らない為、アルカナから出向くのが通常のパターンとなっているのだ。
 ……というコトは、今回あの『大原 美夜』が初めての会合参加だから、自分と一緒にアイツも行く訳であって。
 彼らの所に向かっている時にもう一度聞こうと考えた。








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