【0】 国直属の騎士団《TIME》


 ここはとある世界のとある地域。

 ひとつの国があり、その地域を治めているのは一人の国王。
 そして、国王を護る為に直属の騎士団がある。
 その名前が《TIME》。
 《TIME》には、もうひとつの特別な権限があった。
 国王が悪質な政治を行おうとすると、それを阻止することができるという権限。
 国王を護るのも、国王の意思を拒むことができるのも、この騎士団《TIME》だけだった。
 しかし、その《TIME》も敵わない権限を持つ者達が存在している。
それは、『各自が信じる者』達。
 護るべきものは《TIME》に所属している限り国王一人と決められている。
 しかし、護るべき者と信じるべき者が同じでなくてはならないという決まりはなかった。


 自分が信じる者の為に国を護る。


 その為に、国王を護るのが《TIME》の基本方針だった。


 その《TIME》には、体術を使う者もいれば、剣技を揮う者もいる。
そして、空に式を解き現実の世界へ召喚する者もいる。
とにかく、国王を護る為に力になることができればいいのだ。
つまり、それは強ければ強いほど、この団体の中で権限を持つことができるということも表している。
団長等の位を決めるのは、年に一度の大会。
そこで一番強いことをその場の人たちに証明すればいいだけのこと。


《TIME》創立時の状況はこのようなもの。
しかし、いつまでも揉め事の多い時代であっては困る。
そのような状況がこないように、国を作り変えていたのが初期の《TIME》。
そして、今は――…。
安定した国を保つ為にいる国王と、その平和を維持する為にいる《TIME》、そして歴史を紡いでいく国民がいた。





   【1】 いつものこと


 書庫からさらって来た本達を本来あるべき場所へ還そうと、重い本を抱えて廊下を歩いていた。
「?」
 ふとした事に気がついた。
 視線が捕らえた場所はとある人物の執務室。
 その扉の前にはある人物が立っていた。
――またか……――
 その部屋の持ち主のことを自分はよく知っている。
 いや…『よく』どころではない。
むしろ、『知りたくもない事』まで知っているといっても、間違いではないだろう。
 そして、その扉の前に立っている人物も知っている。
 部屋の持ち主は、この騎士団《タイム》の副団長。
 扉の前で怒りの表情をあらわにして立っているのが団長だ。
「こりゃぁ……。後で慰めに行かないといけないかなぁ…。いやな場面を見たもんだ」
 団長が、おもいきり扉を開け放ち、部屋へと入っていく。
 それを見て、これから起こることが予想できる自分もどうかと思うが、それ以上に、その後の副団長の怒りをなんとか落ち着けようと考えている自分が悲しくなってくる。
 しかし、その役を自分以外ができるか?というと、誰もできないのが事実であって…。
 程よい所でゲージを落としておかないと、必要以上のとばっちりがやってくるとわかっているのだから、平和に日常を過ごそうと願っているなら選択肢は一つしか存在しないのだ。
「自分を守る為の生贄が自分ってわけか……。あーもーやだなぁー」
 ぶつぶつと文句を言いつつも本を抱えなおし、書庫へと向かった。


 これは騎士団《TIME》トップクラスの日常であり、いつものことなのだった。










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