【X】 目覚め



「よく寝ていたなぁ…」
「おはよう…、アーニー。今日は良い天気だよ」
 目を開けると、グロリアとコニーが見下ろしていた。
 自分は…というと、ベッドの中で寝ていたようだ。
 幼い頃からの友達だ。
 今更、人が寝ているところに「勝手に入ってくるな」と、言う理由も無い。
 それぞれにプライバシーを侵害しようとしている訳でもないし、先程も言ったように長年の付き合いだ、三人ともお互いの場所には、それなりに出入り自由だった。
「…………夢…だったんだ……」
 もそもそと起き上がる。
「また、長い夢でも見ていたのかい?アーニー」
 コニーがまだ寝ぼけているアーニーに向かって言う。
 手にはティーカップを持っていて、良い香を放っていた。そしてそれを、ゆっくりと起き上がったアーニーへと手渡す。
 アーニーはそれを受け取りつつも、ゆっくりと一回だけ頷いた。
「ふぅん…、それにしても…アーニーの見る夢って、結構当たるからなぁ…。で?どんなのだった?」
「うん。私も知りたいな」
 二人がそれぞれに言葉を口にしていった。
「あまり…というか、全然良い話じゃないよ?」
 そう言いつつも、ティーカップを両手で持ちながら、ゆっくりと口へ運んでいく。
「ところで…味の方はどうだい?私の家にあった物なのだが…」
 コニーがアーニーを見て言った。
「勿論、いれたのは、俺」
 『自分が煎れたお茶だから、美味しくて当り前!』といわんばかりに、自信を持って言う。
「グロリアは、お茶いれるの、何故かすごく上手いからね…」
 コニーは、苦笑いしている。
「それは、貶してんのか?それとも、誉めてんのか?」
 グロリアが、不本意そうに、コニーに向かって言う。
「勿論、誉めているんだよ」
 コニーは困った顔をして言った。
「ま、そう言うのが賢明な選択だな」
「そうなのか?」
 不思議そうにコニーが聞いてくる。
「……そうなんだよ………」
 ここで、グロリアはコニーが冗談ではなく、本気で言っていた事に気付いて、溜め息交じりにコニーの質問に答えた。
 アーニーは二人のやり取りを見ていて、今のこの幸せな時と、夢に見た、あの…何とも形容し難いモノを、知らない内に比べていた。
 ……やっぱり、これが現実よ。だって、こっちの方は、不思議に思う事がなにも無いもの………。
 ぼーっとしていると、グロリアとコニーが同時にアーニーを見て言う。
「それで…?ずっと本題からそれていたけど、夢の内容は?」
 と、これはコニーのセリフ。
「…で?話がずれていたけど、夢の内容は?」
 と、こちらはグロリア。
 この二人は本当に気の合う仲だと思わずにいられない。
 二人が似たような言葉を言っていた事に、少し笑いながら、アーニーが答える。
「二人して、何似ているような事を言っているのよ」
 アーニーは、二人が会話をしている間に眠気も晴れて、いつもの自分を取り戻しつつあった。
「…別に、狙っていたわけじゃないぞ」
 グロリアが言い訳を言う。
「わかってるわよ。そんなこと」
 アーニーがそう言いながら、ベッドの上で座り直す。
 それを見て、二人も近くにあった椅子をベッドの近くへ移動させ座る。
「なら、少しの間、私の話に耳を傾けていてね」
 アーニーは、今見た夢が現実へと変らないように祈りながら、夢の内容を話していこうと思った。
「これは、あくまでも私の夢よ…。現実なんかじゃないわ」
 その言葉は、多分二人にではなく自分に対して言い聞かせた言葉だった。
 しかし、コニーとグロリアは、自分達に注意を促す言葉だと思ったらしく、二人して頷いていた。





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